法務局に遺言書を預け・保管してもらう制度について
Sumai-pro編集部です。
遺言作成率は諸外国に比べて低いといわれています。
遺言書はここ10年で50%も増えているデータもあるそうです。今回遺言書を作成する人は今後も増えると予測されています。
今回、全国の法務局で令和2年7月10日から始まった遺言書保管制度(自筆証書遺言書保管制度)について法務局の供託課で教えていただきました。
法務局供託課の方は本当に親切に教えてくださいました。
もし皆様が利用されるときも親切丁寧に対応いただけるかと思います。
この記事で「遺言書」のご不安に少しでも役立つことができれば幸いです。
遺言の相談はぜひ弁護士・司法書士・行政書士にご相談ください。
全国の法務局が遺言書の入口に。
(法務局支局内の各階掲示板です。)
2020年7月10日より全国312か所の北は釧路地方法務局から南は那覇地方法務局まで全国の法務局(本局・支局)で実施されています。
保管制度が始まったことも喜ばしいことですが、それ以上になんだか難しそうな遺言書について身近な入口ができたことが嬉しいことですよね。
今回、法務局供託課の方に遺言書保管制度の概要やこの制度での素朴な疑問「遺言書を家族にどのように伝える術があるのか?」など教えていただけました。
全国の法務局が遺言の入口になったことがすごく頼もしいですよね。
全国の法務局一覧≫≫
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji10.html
法務局に預けるのは「自筆証書遺言」
自筆証書遺言とは自筆で作成する遺言書です。
代筆は許されませんので必ず自分自身の字で書く必要があります。
また2019年から自書によらない財産目録を添付することができるようになりました。
(財産目録には署名押印をしなければなりません。)
自書によらない財産目録
・パソコンで目録を作成
・通帳のコピーを添付
全てを手書きでする必要がなくなったため負担もだいぶ減ったのではないでしょうか?
自分一人で書くことができますし、手数料もかかりませんので公正証書遺言に比べて手軽に作成できます。(法務局保管申請には3,900円かかります。)
またいつでも遺言の撤回・作成しなおし・変更ができることが「自筆証書遺言書」が最大のメリットです。
今回この記事で解説する法務局に預け、保管してくれるのはこの自筆証書遺言です。
【参考】遺言の方式|公正証書遺言
遺言書は主に自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
もう一つ秘密証書遺言もありますが、少数なのでここでは説明を省きます。
公正証書遺言とは、法律の専門家である公証人の関与の下で、2人以上の証人が立ち会うなど厳格な方式に従って作成され、公証人がその原本を厳重に保管するという信頼性の高い制度です。確実に有効な遺言書を残したいときや相続財産の金額が大きい時に主に利用されています。厳重に保管されているので相続開始後、家庭裁判所での検認は不要。
法務局に預けるのは「自筆証書遺言」です。
公正証書遺言は預けられません。
遺言書保管制度の特徴①「自筆証書遺言」のデメリットを解決!?
「自筆証書遺言」は比較的簡単に作成できるがゆえにデメリットがありました。
「自筆証書遺言」のデメリット
- 相続人に発見されないことがある。
- 偽造や隠蔽される恐れがある。
- 相続開始後、家庭裁判所で検認手続きが必要
など遺言書作成後管理の問題や相続人に少ないながらも負担をかけなければいけないといった点がデメリットと言われています。
法務局に保管すること「自筆証書遺言」のデメリットが解決!?
まだ始まったばかりの制度のため解決と言い切れはしないでしょうが、解決を目指した制度です。
・相続人に発見されないことがある。
解決方法≫≫ 死亡時の通知を希望すれば遺言保管官が通知対象者に連絡を取ってくれる。
(2021年4月以降)
・偽造や隠蔽される恐れがある。
解決方法≫≫ 法務局に保管されているから安心。
・相続開始後、家庭裁判所で検認手続きが必要
解決方法≫≫ 本制度で保管された遺言書は検認が不要。
と多くの「自筆証書遺言」のデメリットが解決される見通しです。
上記に解説した内容以外にも自筆証書遺言書保管制度には様々な取り組みがなされています。
遺言書保管制度の特徴② 一人が見たらその他全ての相続人に通知
相続開始後、相続人の一人だけが内容を見て、隠蔽されてしまわないようにするための取り組みです。
相続人等が遺言書情報証明書(遺言書の写し)の交付を受けたり、遺言書の閲覧を行った場合には、その他の全ての相続人等へ遺言書が保管されていることの通知されるようになっているため、相続人同士が連絡先を知らない場合でも、この通知で互いに相続が発生していることを知ることができます。
(上記イラスト:http://houmukyoku.moj.go.jp/nagoya/page000001_00166.pdf 一部引用)
遺言書保管制度の特徴③ 「遺言」画像データで全国の法務局で見ることができる。
相続開始前の遺言閲覧について
相続開始前は、遺言者のみが全国の法務局(本局・支局)が「遺言」画像データを見ることができます。もちろん、預け保管されている法務局で原本も見ることができます。
※閲覧の手数料:画像データ閲覧 1回につき1,400円 原本閲覧 1回につき1,700円
相続開始後の遺言閲覧について
相続開始後は、相続人・受遺者等・遺言執行者等が全国の法務局(本局・支局)が「遺言」画像データも見ることができるようになります。
相続人が全国に離れ離れになっている場合、全国の法務局で画像データの閲覧できることは大変助かるのではないでしょうか。
特徴②で説明したように通知が来た場合、最寄りの法務局に出向くことで「遺言」画像データで内容を閲覧することが可能になり、遺言者の想いをスムーズに伝わるでしょう。
※閲覧の手数料:画像データ閲覧 1回につき1,400円 原本閲覧 1回につき1,700円
遺言書保管制度の特徴④ 保管の際に外形的な確認をしてもらえる。
遺言書のもっとも大きなハードルは遺言の書き方ではないでしょうか。
残念ながらこの法務局に預ける自筆証書遺言書保管制度では遺言書の有効性を保証されるものではありません。
また、遺言内容の相談は法務局ではできません。
有効性が心配であれば遺言の専門家である士業や相続の専門家に相談することをおすすめします。
それでも法務局職員さんに外形的(全文、日付、氏名の自筆かどうか、押印の有無)な確認をしていただけます。信用性はある程度あがるため、相続開始後、家庭裁判所での検認が不要となっているようです。
遺言書保管制度の特徴⑤ 自筆証書遺言書のメリットはそのまま
自筆証書遺言書のメリットは
・遺言書の撤回
が比較的容易にできることです。
法務局にて保管された遺言書の返却(撤回)は保管されている法務局だけになります。撤回書を提出することで撤回することができます。
※遺言の撤回手数料はいりません。
遺言書ほかんガルーは可愛くて頼もしい
自筆証書遺言書保管制度のマスコットキャラクター 遺言書ほかんガルー は可愛い。
お腹に鍵穴としっぽについた鍵を持つカンガルーとリボンをした小さなカンガルーは親子なのでしょう。親子カンガルーが保管制度の解説資料の様々なところにイラストで詳しく説明してくれています。
すこし目を落として大切にお腹のポケットに遺言書を入れるしぐさは、生前に想いや願いを込めたつくった遺言書を相続人は故人を思い、偲ぶことを願ったイラストのように感じます。
自筆証書遺言書保管制度や遺言書ほかんガルーを通して遺言書を考えてみませんか?
遺言書ほかんオジサンも遺言書ほかんガール(法務局職員、遺言書保管官)が待っていると思います。
なお、本制度に係る全ての手続きには予約が必要だそうです。気を付けてください。