2020 6 29

防水計画シリーズ③-下屋及び谷トユの防水事故

防水計画シリーズ③-下屋及び谷トユの防水事故

前回までのシリーズの内、次に多いのは「サッシ回り」と「防水紙および防水テープの施工方法」ですが、そちらは次回記事とさせていただきまずは、木造住宅におけるエクスパンションジョイントに当たる下屋の取り付け部分の事故も多いため、こちらから先に考えてみたいと思います。

防水計画シリーズ③-下屋及び谷トユの防水事故

皆様もご存知と思いますが、すべての建物には※固有周期があります。

 

(※固有周期:振り子のように自然に揺れることを自由振動といい、その時の周期(片側に振れて再び戻ってくるまでの時間のこと)を「固有周期」という。固有周期は質量が大きくなるほど長くなり、逆に剛性が大きくなるほど短くなる。例えば建築物では、その高さが高くなるほど質量が増大し、その結果、固有周期は長くなる。住宅などの建築物を設計する場合、その建物の建設予定地の地表地盤と、建物自体の固有周期をそれぞれ測定し、2つの固有周期が一致しないように設計することが基本となる。)
引用 辞典・百科事典の検索サービス – Weblio辞書

 

固有周期は次の事柄で変化します。

〇建物の形状
〇高さ
〇床面積の大小
〇構造
〇重量

おのおの固有周期(即ち建物形状の違いごとの揺れ)違います。

次に1次固有周期の考え方について日建学院の構造の教科書にデフォルメした図を見つけたので表示させていただきます。
(建物の固有周期の考え方)

〇建物の高さが高いほど長くなる
〇建物の剛性が高いほど短くなる
〇地盤が軟弱なほど長くなる

防水計画シリーズ③-下屋及び谷トユの防水事故
防水計画シリーズ③-下屋及び谷トユの防水事故

 

 

揺れ幅の差がジョイント部分に不具合を起こし雨漏り事故の原因

固有周期は図にモデルのようにばね定数が小さいほど(串団子の串が柔らかいほど)また、質量が大きいほど(ダンゴが重いほど)長くなるという特徴を理解してもらう必要があります。

この結果から2階部分と平屋の揺れ(周期)の周いが理解いただけると思います。この揺れ幅の差がジョイント部分に亀裂(不具合)を起こし雨漏り事故の原因になるのです。

このためにジョイント部分にガルバニウム鋼板やガルバニウム鋼板や銅版の捨て貼りをし、その上に防水層を設け、のし瓦や金物加工で二をして揺れで起こる水平差異に追従できるようにしているのですが、この捨て貼りの金物の設置を手抜きする施工者が増えています。

建築経費の削減のために、水切り捨て貼り金物を1枚(何㎡か?)減らす金額と、後日雨漏り事故を起こして「手抜き工事」と認定され、賠償請求される金額と、どちらが多いと思いますか? また、金額以上に施主様な工務店の親手等に信用をなくして仕事がなくなるほど馬鹿らしいことはありません。自分で自分の首を絞めることだけはやめましょう。

 

防水計画シリーズ③-下屋及び谷トユの防水事故

上記図はあくまでデフォルメした図ですが基本です。この捨て貼り金物をいれないと、家の揺れの変異が防水紙に直接影響し防水紙をシワだらけにし、しまいには(亀裂が入り)破ることになり防水外が滑らないからです。
ガルバニウム鋼板等で良いのです。必ず入れてください。

また、〇形状 〇高さ 〇重さの違う建築物
の組み合わせのジョイント部分は、すべてエクスパンション・ジョイントであると理解していただいても結構です。
その考えで水仕舞いを行えば、かなりの雨漏り事故の軽減につながります。昔から行われている水切り金物の無駄折りは経験に裏打ちされており重要です。

この考え方は、谷トユにも当てはまります。すべて金物の無駄折りだけで水仕舞いを行う(コーキング・シーリングに頼らない)方法が雨漏り事故防止の最善策と私は考えています。
またなにより家自体を揺らさない方法との併用が大事です!!

 

 

家を揺らさない方法の記事についてはこちらをご覧になってください。

防水計画シリーズ③-下屋及び谷トユの防水事故

 

 

雨漏り事故の定義

雨漏りについてもう少し続きます。

全国雨漏検査協会では、次のように雨漏り事故の定義を考えています。

「瓦の裏に雨水が回り込んでも、軒先からトユに入るかか外部に排出される場合や、また壁面では、外装材より内部に雨水が侵入しても、防水層より内部に入らず下部の水切りから外部に搬出される場合には雨漏り事故とはいわない」

 

それは、屋根・壁共に雨水が侵入しても壁体内をたてトユに見立てているからであり、機能が発揮されていると考えます。
一方防水層より少しでも室内側に入り込んだり小屋根裏や梁の方向に入り込む場合は雨漏り事故であるとの定義になります。

すべての水切り金物は、建物の揺れ変異に対応できなくてはなりません。サイディングの釘打ち工法で釘の打ち付け部分にクラックが多く発生するのは、抵抗しきれなくなった結果クラックとなっています。この問題を解決するために、変位を吸収し対応するために、金物ひっかけ方式で建物の揺れに対応(一種のカーテンウォ―ル)できる方法を採用される方が増えています。

 

防水計画シリーズ③-下屋及び谷トユの防水事故

 

谷トユの話なのに、どうしてサイディングの話と思われるでしょうが、揺れの感覚を覚えていただくためです。

谷トユの設置場所は、おおむね変位の起こるポイントに谷トユが有る為に揺れで金物と瓦・野地板と金物の関係でズレが生じ、不都合が発生しやすいので、その対策が必要なためです。
その上オーバーフローした雨水の処理も絡みます。前述の雨漏り事故の定義のように、あふれても防水層で守られて速やかに外部に出ていくものであれば、雨漏りではないので安心です。

 

防水計画シリーズ③-下屋及び谷トユの防水事故

 

防水計画シリーズ③-下屋及び谷トユの防水事故

 

ここで書いている図はあくまでも標準図です。ほかにも素晴らしい方法があると考えています。皆様の方法をまた教えてください。期待しています。

基本はコーキング等のシーリング材を使用しない水切り板の加工です(この研究だけで何か特許が取れそうですね。)

前回も申しましたが、コーキング等のシーリング材をすべてダメと言っている(信用しない)のではなく、適材適所に使用しあくまでも補助剤として考えてみる必要があるということです。

家の揺れでの不具合の実例として、名古屋で公的機関の依頼で雨漏り検査を実施し、施主・工務店・検査員(2名)公的機関立会人(建築し・支部担当員)の検査で(原因を突き止め改修、雨漏りが止まるも、再び同じ場所に1か月後漏水したため、再検査となったものです。)
前回検査時に確認していないコーキングの亀裂を発見し前回この不具合がなかったことを全員が確認し、試しに検査を実地すると施主の指摘通りの状態での漏水を認めました。

改修工事が完璧かの再検査は必ず必要ですが、こんなに早く別の場所に揺れの不具合が現れたことに驚きを隠せません。
揺れを止めないと同じ事の繰り返しで雨漏り事故から逃れないとの結論に達しました。家の揺れが雨漏り事故となる理論を絵に描いたような現場でした。サッシの上場の抑えコーキングからです、防水テープを倭工し、その上から防水紙を施しているはずですが、防水層不良も発生したみたいです。
家の揺れを止めないと基本的に直りません。一時的に直ってもいずれまた雨漏りの原因箇所となります。この現場は、ナット自動増締め装置の採用を真剣に考えることになりました。

このシリーズは木造住宅に展開していますが、S造・RC造も同じ考えです。いかにすれば雨漏り事故から逃れられるかがポイントです。工法を置き換えて考えてください。
次回は、防水紙・防水テープの施工ミスあれこれになります。

屋根の防水

下ぶき材は、JIS A 6005(アスファルトルーフィングフェルト)に適合するアスファルトルーフィング940、またはこれと同等以上の性能を有するものとし、下ぶきのふき方等は次の各号に適合するものでなければならない。
1.上下(流れ方向)は100mm以上、左右は200mm重ね合わせること。
2.谷部および棟部は谷底および棟頂部より両方向へそれぞれ250mm以上重ね合わせること。
3.屋根面と壁面立ち上げ部の巻き返し長さは200mm以上とすること。
(財団法人住宅保証機構 性能保証住宅設計施工基準より抜粋)

HOUSE'Dr!(ハウスドクター)
生活のプロ

HOUSE’Dr!(ハウスドクター)この組織は全国組織です。雨漏りかなと思ったら早期の診断ご検討ください。

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